NHKスペシャルの夏王朝の謎を追った番組とかぶるところも多かったが、「禹」に焦点をあてているのであたらしい発見や考えさせられるところもあった。
たしか史記には、禹は「治水」の功績により王位を帝舜から禅譲されたとあったと思う。ワタクシは「なんで治水なんだ?」と疑問に思ってた。
この番組を観てそれを理解できた。黄河や長江といった大河は人に恵みを与えると同時に「荒ぶる河」でもあった。太古の大陸にはすでにいくつか文化圏が誕生していたようだがそのほとんどが「洪水」よって滅亡した。
その当時、地球規模の気候変動がありエジプトやメソポタミアもそのために滅亡したようだ。
中国の場合、気温の低下と降水量の増加という異常気象だった。
古代中国では「暦」を独占していた者が「王」であった。暦は農耕と密接に関係していたため暦の情報を独占していた王が民を支配し民の上に君臨できた。しかし大洪水という天変地異で中国大陸にあった文化圏のそのほとんどが消滅していった。そのなかで生き残ったのが禹が治めていた文化圏だった。
禹は治水により河を制し安定した文化圏をつくり中国最古の王朝を生んだ。それが夏王朝だ。
夏王朝があったとされる二里頭村の四千年前の地層から当時の農作物の痕跡をみると、「粟」「黍」「小麦」「大豆」「水稲」という五種類もの穀物をつくっていた。つまりあらゆる気候に対応できたということだ。それがこの文化圏だけが生き残り栄えた理由のひとつであった。禹は河をつかって各地の穀物の情報を集めたと思われる。
それとともに、夏王朝は「儀礼」によって民の心を支配した。その文化の名残りは中国最後の王朝の清にまで引き継がれていく。
夏王朝が直接支配した範囲は半径数百キロほどでしかなかったがその文化の影響はそれをはるかに越える地域にも広がっていった。つまり文化によって大陸を支配したのだ。
その他のキーワードとして「玉」や「龍」などがあった。現在でも中国を象徴するアイコンだ。
ナビゲーターの中井貴一も言っていたが、国の歴史を知ることはその国を理解することであり、自然と愛着も生まれる。だからワタクシは中国を嫌いになれない。
sundaymarch312013
