「集合知」という言葉がある。一人の優秀な頭脳よりも多数の一般的な頭脳のほうが良い判断をし、より良い未来へ導く。というもんらしい。それが数学的に証明されているらしい。
著者は、この「集合知」がルソーのいうところの「一般意志」に相当するという(一般意志の現代版ということで「一般意志2.0」と名付けられている)。ちなみに「一般意志」とは「
つねに正しく、つねに公の利益を目ざす」ものであって「特殊意志(個人の意志)」の総和である「全体意志」とは違うものなんだそうだ。
著者はそれを民主主義に反映させようという(「民主主義2.0」)。当初は直接民主主義のことを言ってるのかと予想してたがまったく違っていた。具体的には議事堂のなかにモニターをおいてニコニコ動画のように国民のツッコミを入れるという。とてもSFの匂いがする(著者はSF作家でもある)。
方法論はともかく「国民の集合知を政治に反映させよう」というアイデアは素晴らしいとおもう。ネットを使って直接民主主義を行うことには「現実的でない」と著者は言う。たしかにそうかもしれない。
また「日本2.0」では「ゲンロン憲法」なるものをつくっている。総理の直接選挙制や観察院・人事院の独立などいろいろな特徴があるがこれは「リベラル憲法」だということだ。
ゲンロン憲法の一番の特徴はやはり「国民」と「住民」という概念だろう。「国民」とは日本国籍を持つ者で現憲法のそれと同じだ。海外在住でも日本国籍があれば「日本国民」ということになる。一方「住民」とは日本の国土にすんでいる者をいう。そこには日本国民だけでなく在日外国人も含まれる。つまりはこの「住民」にも参政権を与えようという考えだ。
現在の日本のもっとも重大な問題ともいえる財政と社会保障の危機は少子高齢化と人口の減少に主な原因がある。それをかいけつするには外国人の積極的な受け入れしかないと著者は言う。賛成である。この国の排他的なローカル・ルールには辟易しているので外界の遺伝子を受け入れ価値観や思想やシステムなどどんどん進化させるべきだとおもう。
あと二院制の設計を独創的だった。そこで世界の二院制を調べてみたところ、いろいろ面白いことがわかった。たとえば英国の貴族院は一代限りの貴族の称号を得た有識者で構成されている。その他にも任命制だったり間接選挙制だったりと世界の上院(日本の参議院)は選挙制度や役割において下院(日本の衆議院)と差別化しようと努めている。上院はその高い識見により下院を監視、助言する役割を担保しようとしている。
ゲンロン憲法での参議院(国民院)は国家I種のような資格の合格者や博士号取得者、一部上場の経営者などを条件にしている。そして国外の外国人にも被選挙権がある。
まあ、そこまでしなくても参議院の個性化は必要だとおもった。
東 浩紀
講談社
売り上げランキング: 25,119
東 浩紀 村上 隆 津田 大介 高橋 源一郎 梅原 猛 椹木 野衣 常岡 浩介 志倉 千代丸 福嶋 麻衣子 市川 真人 楠 正憲 境 真良 白田 秀彰 西田 亮介 藤村 龍至 千葉 雅也 伊藤 剛 新津保 建秀
ゲンロン
売り上げランキング: 39,536
thursdayaugust292013