ハピネット (2006-10-27)
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2003年アメリカ映画。主演はアナキン・スカイウォーカー役で有名なヘンデン・クリステンセン(Hayden Christensen)。
あらすじは、アメリカの権威ある雑誌「THE NEW REPUBLIC」の記者スティーブン・グラスが起こした記事捏造事件を描いている。これは1998年に起きた実話。
「スティーブンは優秀な記者」→「取材先にだまされ嘘の記事を載せてしまう」→「が、実はそれはスティーブンの捏造だった!」と、一応、サスペンス調になってるが、帯に「27も事件を捏造した云々」と書いてあるのでそこはあまり重要じゃないみたい。
かといって、捏造の方法を描くクライム・ムービーでもない。
興味深いのはスティーブンが「なんで記事を捏造したのか?」てことを見過ごしちゃいそうなほどさらっと描いてるところ。明確に提示せず「暗示」的なので無意識レベルで訴えてくる。
観終わってからゆっくり分析すると、まずスティーブンが育ったハイランドパークという場所は保守的な田舎で、スティーブンの親は息子に弁護士になることを強要するような抑圧的な親だということが垣間見れる。
劇中、スティーブンはいつも周囲の人たちのご機嫌をとっている。そして、他人が怒っているかどうかを極端に気にして怯えている。これはスティーブンがつねにプレッシャーに晒された環境で育ってきたことを推測させる。
そして、彼が彼の母校で武勇伝を語るシーン。語りかけていたはずのたくさんの後輩たちは彼の幻想だったという場面は、虚言癖の人にある「空想をリアルに感じる」「空想を現実と混同する」という特徴をあらわしている。さらにピンチになったときに泣いたて駄々をこねて許してもらおうとするスティーブンの幼児性。
ここで推理。
彼の虚言癖は(たぶん)両親を喜ばせるために幼いころから習慣的にやってきたことなのではないか。スティーブンの親は厳格で折檻も日常的に行われていかもしれない。スティーブンは親に支配され、つねに親の目を気にしながら生活しなければならなかった。そして厳格な親を喜ばせるため自分が活躍した「嘘」をつきはじめた。人は誰しも多かれ少なかれ他人によく思われたいために嘘をついた経験を持っているだろう。いわゆる「虚勢を張る」というやつだ。スティーブンにとってそれが日常だったのだろう。その癖は社会に出て記者になったあとも変わらなかった。この事件はその悲劇(喜劇?)の結末だった。
演出のほうも結構しゃれてて、はじめ悪役として登場する新編集長のチャックとスティーブンが対称的にかつオーバーラップして描かれるラストは、二人の立場がクロスオーバーしていき印象的だった。
チャック役のピーター・サースガード(Peter Sarsgaard)が個人的によかった。